宗像の里山を再生し、すべての基盤となる水源を次世代へ。 今、それぞれができることを・・・

・発起人のおひとりである 木下旧理事の想いが、2007年12月発行の会報創刊号に掲載されておりますので、ここに転載させていただきます。

宗像に来て40年になる。この地に骨を埋めることになるだろう。まことに住みよいところである。交通の便もよく、両百万都市が育んでくれる文化的条件も豊かである。海の幸・野の幸もまことに結構である。ただ一つ重大な弱点がある。それは水である。頼るは釣川一筋の流れのみ、その流れのなんと貧弱なことか。しかもその流れは年々細ってきている。

問題は源流の森の植生である。記録によれば明治時代まで、釣川の河口周辺のいわゆる汽水域には、獲りきれないくらい魚介類が豊富だったらしい。貝のエサはプランクトンである。この川の水質には、海中生物のライフサイクルの原点である植物プランクトンの発生に必須な物質であるフルボ酸鉄(葉緑素形成に必須な化合物)が多く含まれていたというのである。そのフルボ酸鉄を含む水は、腐葉土層から流出するものであるから、この川の源流地帯には落葉樹が豊富に繁っていたことを意味する。昭和30年頃からの社会的状況の急激な変化により、我国の森林の植生は大変貌をとげる。放置された山林には、孟宗竹が激しい勢いで繁殖していった。竹林には腐葉土層が形成されないため、保水力も落ちてしまう。

私はこの孟宗竹の異常繁殖をなんとか阻止しなければならないと考え、個人的に源流地帯を調査したり、参考文献を調べたりしてきたが全くラチがあかなかった。
3年前ある縁で、中里亜夫、山本登、川上直幸氏等の優れた活動家に出会い、たちまちに意気投合してこの「宗像里山の会」が発足し、堅実な活動を続けて来た。今年の秋にはNPO法人の認定を受けるに至った。現状ではこの会の成し得ることは微々たるものではあるが、今後この事業が、同様の環境問題を抱える西日本全域にわたる国民的事業として発展するためのさきがけとなるよう願っている。